折角
ナビゲーションに移動
検索に移動
日本語[編集]
副詞[編集]
- わざわざ、骨を折って。
- 親切にも。運よく。恵まれたことに。好都合に。
- (古用法) せいぜい。がんばって。
- 行倒の乞食の懷から小判で百兩出たといふ話には驚かないが、その行倒れを毒死と睨んだ平次親分の目には恐れ入つたよ、――此處は馬道だから、筋を言や俺の繩張りだが、そんなケチな事は言はねえ、まア、折角やんなさるがいゝ。(野村胡堂 『錢形平次捕物控 血潮と糠』)
名詞・形容動詞[編集]
- わざわざ骨を折ってすること。得ること。
- 昔、四十七士の助命を排して処刑を断行した理由の一つは、彼等が生きながらえて生き恥をさらし折角の名を汚す者が現れてはいけないという老婆心であったそうな。(坂口安吾 『堕落論』)
- 「貴君の作品の中で、愛着を持つてゐらつしやるものか、好きなものはありませんか」と云はれると、一寸困る。さういふ条件の小説を特別に選り出す事は出来ないし、又特別に取扱はなくてはならない小説があるとも思へない。(略)かう云ひ切つて了ふと、折角の御尋ねに対する御返事にはならないから、(芥川龍之介 『風変りな作品に就いて』)
- 私は一体懺悔と芸術とを一緒にしてゐないが、また少しでも自己弁解乃至自己弁護の芸術の中に雑るのを嫌つてゐるが――そのために折角な芸術が芸術として味ははれなくなるのを常に恐れてゐるものであるが、これに限らず、この作者のものは、すべてさういふ点において非常に欠点があると私は常に思つてゐる。(田山録弥 『三月の創作』)
- 親切なこと。運のいいこと。恵まれたこと。よい機会。楽しくやっていること。
- 若しおよろしいようなら、今日は折角でございますから奥様だけでも是非おいで下さいますように。一年にたった一度のクリスマスで――(宮本百合子 『或る日』)
- あいにくこの方面も種切れです。が、まあせっかくだから――いつおいでになっても、私の談話が御役に立った試がないようだから――つまらん事でも責任逃れに話しましょう。(夏目漱石 『文壇の趨勢』)
- 日本人に生れながら、あるいは日本語を解しながら、鏡花の作品を読まないのは、折角の日本人たる特権を抛棄しているようなものだ。(中島敦 『鏡花氏の文章』)
- 「あら!」/と、月江が目を見はッたのは、その調子はずれに驚いたのではありません。/扇の飛んで行った次の間に、ひとりの男がいつのまにか坐っていて、/「折角なところを、夜分お邪魔いたしまして相すみませんが」/と、その扇を持って、いざり出して来たからでありました。(吉川英治 『江戸三国志』)